大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(う)2984号 判決

被告人 平田武敏

〔抄 録〕

検察官の控訴の趣意について。

按ずるに、医師法第二十条にいわゆる診断書というのは、医師が特定人に対する診察の結果に関する判断を表示し、もつて、その健康上の状態を証明するために作成する文書をいうものであることは、同条の規定に徴して疑のないところである。よつて、公職選挙法施行令第五十二条第一項第三号(但し、昭和二七年政令第三四七号による改正前のもの以下同じ)の医師の証明書が右診断書にあたるかについて考えてみると公職選挙法第四十九条第三号(但し、昭和二七年法律第三〇七号による改正前のもの以下同じ)及び同法施行令第五十二条第一項第三号の各規定を総合して考え合せて見ると、公職選挙法は選挙人が疾病、負傷、姙娠、不具又は産褥にあるため歩行が著しく困難である場合には、これに対し厳格な制限の下に一般の投票所においてする投票以外の方法による選挙権行使の途を開いているものと解せられ、従つて、同法施行令第五十二条第一項第三号に基いて作成される選挙人に対する医師の証明書は、その内容が医師の診察の結果に関する判断を表示して人の健康上の状態を証明する部分を包含する限り、必ず医師自らその選挙人を診察した上これを作成交付すべきものであり、たとえ証明書請求の理由が真実なりと思料する場合でも擅に医師法第二十条所定の診察をしないで証明書を作成交付することは、法の許容せざるところであると解すべきであろう。それ故、右証明書の内容が医師の診察の結果に関する判断を表示して人の健康状態を証明する部分を包含している限り、これを医師法第二十条にいわゆる診断書と解すべきは理の当然である。そこで、訴因変更請求書添附の別表第一の(1)(2)記載の選挙人鈴木もと外五十八人及び同別表第二の(1)(2)記載の選挙人小林いね外百四名に対する各証明書の内容を精査してみると、右は前記の理由によつてこれを医師法第二十条にいわゆる診断書と見るべきものであり、原審がこれを右の診断書にあらずとして被告人に対し無罪の判決を言い渡したのは、公職選挙法施行令第五十二条第一項第三号にいわゆる医師の診断書の意義を誤解したものであつて、原判決には既にこの点において法令の適用に誤があつて、その誤が判決に影響を及ぼすことが明らかであるといわなければならない。従つて、論旨は理由があり、原判決は爾余の点について按ずるまでもなく到底破棄を免かれざるものである。

よつて、刑事訴訟法第三百九十七条によつて原判決を破棄し、同法第四百条本文に従い、本件を千葉地方裁判所松戸支部に差し戻すこととする。

註 同旨第二巻第一七九号、第二五七号各事件、尚本判決と同日同部において同旨判決(二七(う)第四、〇一九号)あり。

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